きたかぜと たいようは、
どちらが より つよいか、
いいあらそいました。
そして、 はじめに
たび人の ふくを
ぬがせる ことが
できたほうが かち、
という ことに しました。
きたかぜが さきに
力を ためしました。
ぜん力で かぜを ふかせましたが、
つよく ふかせれば ふかせるほど、
たび人は マントを きつく
からだに まきつけました。
とうとう きたかぜは
かちを あきらめて、
たいようを よびつけて、
たいように なにが できるか
たしかめる ことに しました。
たいようは ぜん力で てりつけました。
たび人は たいようの
ひかりの あたたかさを
かんじるや いなや、
つぎつぎに ふくを ぬぎました。
さいごには すっかり
あつくなってしまい、
はだかに なって、
みちの 先の 小川に つかりました。
力づくで やらせるより
せっとくする ほうが いいのです。
のどがからからのカラスがいました。
水さしを見つけて、水がのめるかと思って、うきうきとんでいきました。
たどりついてみると、カラスはかなしくなりました。
水さしの中の水がとても少なくて、飲めそうになかったからです。
カラスは水をのむために考えられることをぜんぶためしましたが、むだでした。
さいごにカラスは、はこべるだけのできるだけたくさんの石をあつめ、一つ一つくちばしで水さしの中におとしていきました。
こうしてカラスは自分がのめるだけの高さまで水のかさを上げて、いのちびろいしました。
ひつようは はつめいの 母なのです。
川のそばで木を切っていた木こりは、まちがっておのを深い水の底に落としてしまいました。仕事道具をなくしてしまった木こりは、川ぎしにすわって、かなしがりました。
ヘルメースがあらわれて、木こりがなぜ泣いているか、わけを
聞きました。木こりがヘルメースに自分に起きたかなしいことをせつ明すると、ヘルメースは川にもぐって金のおのを持ってきて、木こりがなくしたのは金のおのか、聞きました。木こりが金のおのを自分のものではないと言うと、ヘルメースはまた水の中に行って、銀のおのを持ってきて、また木こりに、銀のおのは木こりのものか聞きました。木こりが銀のおのを自分のものではないと言うと、ヘルメースはまたまた水にもぐり、木こりがなくしたおのを持ってきました。木こりはそれを自分のものだと言って、おのがもどってきたのでよろこびました。ヘルメースは木こりの正直さにうれしくなって、金の
おのと銀のおのも木こりにあげました。
木こりは家にもどると、なかまたちに起こったことをすべて話しました。なかまの一人はすぐ、同じことをして、自分も同じようないい目にあおうとしました。かれは急いで川へ行き、わざとおのを川の同じ場しょに投げ入れて、川ぎしに座って泣きました。
かれがきたいしたとおりにヘルメースはあらわれ、かれが泣いたわけをたずねて、川にもぐり、金のおのを持ってきて、かれがなくしたのはその金のおのか聞きました。かれはよくばりなことに金のおのをつかんで、それこそが自分のなくした
おのだと言いはりました。ヘルメースはかれのうそにおこって、金のおのを取り上げただけではなく、かれが川に投げ入れたおのも返しませんでした。