わいわい文庫は、障害のある子どもにも余暇や人生を楽しむために読書が必要という思いから、平成22年にその活動をスタートしました。児童書をマルチメディアデイジーに編集し、学校や図書館、小児科や眼科などの医療機関、放課後等デイサービスなどの団体に寄贈しています。伊藤忠記念財団では、紙の本の助成事業も行っていますが、紙の本では読むことに困難のある児童生徒にも利用しやすいマルチメディアデイジー形式での読書支援の取り組みも、ぜひ知っていただきたいです。この取り組みが、読みたい時に読める本がそばにある読書環境づくりになること、そして、本を手に取った子どもにとって、人生を変える出会いになることを願っています。
わいわい文庫は、文字や音声、画像を同時に再生できるデジタル録音図書(マルチメディアデイジー形式)を、読むことにニーズのある子どもの教育・支援をしている団体に寄贈しています。 小学生から中学生向けの図書を取り扱っていますが、子どもの好みはさまざまです。その年の流行や、他団体の製作状況などもチェックしながら、毎年約60~90書目ほど選書しています。申請いただいた団体には、CD・DVD-ROM(以下、CD)にデータを入れて、お送りしています。CDには再生ソフトを付加していますので、Windowsパソコンに挿入するだけで読書ができます。同封の受領証を返送いただいた団体には、翌年も継続して提供する仕組みになっています。
わいわい文庫の蔵書検索では、書名、著作者名、出版社の他、ジャンルや形態、対象年齢、再生時間からも、条件検索ができます。ジャンルは物語、昔話以外にも、宇宙や植物、乗り物など、23カテゴリーに分けています。作品ごとに再生時間も表示していますので、ニーズに応じて選択することができます。
わいわい文庫は、著作権法第37条第3項に基づき製作している作品(白い盤面CD)と、著作権者の了承を得て、障害の有無に関わらずどなたでもご利用いただける「Ver.BLUE」(青い盤面CD)をセットで寄贈しています。「Ver.BLUE」は、外国にルーツのある児童生徒にもご利用いただけます。白い盤面のわいわい文庫は、通常学級に在籍する読むことに困難のある児童生徒の読書支援にも、ぜひご活用ください。
テキスト作成、画像・音声入れ、ルビつけなどの電子化は、財団内で行っています。音訳は全国音訳ボランティアネットワークや劇団に依頼しています。
紙の本からマルチメディアデイジー形式に電子化するにあたって、読みやすくなるような工夫を心がけています。絵本は表示される行数を少なくし、本文の読み上げをしている時に、ページの絵が流れてしまわないような調整をしています。また、ページの最初に見開き画像を載せ、絵本を開いた時のイメージも大切にしています。ブラウザ再生できるサンプルをぜひ試してみてください。
障害のある子どもたちへの読書支援に必要な知識や方法について、専門家を招き、読書バリアフリー研究会を、オンラインや現地で開催しています。現地開催の場合は、バリアフリー図書の展示も行い、図書館員や学校教職員、当事者の方やその保護者など、参加された方の情報交換の場にもなっています。また、電子図書普及事業のウェブサイトでは、Webセミナーとして、読書バリアフリーに役立つ情報などを動画で掲載しています。
さらに、読書バリアフリーの理解、啓発のため、出版社や地域の図書館への働きかけも行っています。例えば、全国の公共図書館に呼びかけ、各地に伝わる昔話や伝説を収集し、地域の学校やボランティア団体とも連携しながら、マルチメディアデイジー図書製作を協同で行なっています。製作した図書は、「日本昔話の旅」としてわいわい文庫「Ver.BLUE」に収納しています。公共図書館との連携で、これからの図書館サービスの充実にもつながっていくことに期待しています。