南行徳中学校では、学校図書館教育活動計画に図書館資料収集方針として、障がい者用資料について明記している箇所があります。全ての生徒が区別なく同じような読書環境を保障されることを意識し、環境整備をしようという学校司書の思いから、明記されたものです。学校図書館は、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備です。特別支援教育コーディネーターとして、校内で多様なニーズのある生徒の支援を共有し合う環境づくりを行っていますが、生徒、教員、学校図書館をつなぎ、読書バリアフリー環境を整えていくことは、すべての生徒にとって、学びの機会保障や人それぞれに合った読み方・学び方があるという多様性の理解にもつながっていきます。りんごの棚やさまざまな情報共有の場を活用しながら、読書バリアフリー環境づくりに取り組んでいきたいと思います。
南行徳中学校では、学校経営方針に図書館活用やユニバーサルデザインを意識した授業の実践を盛り込んでいます。学校評価アンケートにも、本校独自項目として、「日頃から読書に親しんだり、図書資料を使って調べ学習をしたりしていますか」と記載しています。読みに困難があり、特別支援を必要とする生徒にとって、「読みやすい・分かりやすい」環境作りは重要です。特別支援教育コーディネーターとして、学校図書館長である校長や学校司書とも、読書バリアフリーに関する周知や環境づくりについて相談しながら取り組んでいます。
読書バリアフリー環境づくりの一環として、学校図書館にりんごの棚を設置しています。バリアフリー図書について知ってもらい、りんごの棚の資料から話題を広げ、さまざまなテーマをみんなで考える場となっています。千葉県立中央図書館のバリアフリー資料紹介セットなども活用し、生徒だけでなく、教職員にも読書バリアフリーについて知ってもらう機会づくりを心がけています。
放課後の職員室で、千葉県立中央図書館からお借りしたバリアフリー資料紹介セットや、電子ルーペなどの読みの支援機器を紹介しています。生徒の情報が行き交う時間にアプローチすることで、授業づくりに関連した内容も話題になります。
通常学級の授業で、国語科の教員と連携し、「分かりやすさを考える授業」として、「なぜ、ルビをつけているのか」について話し合う授業を行いました。学校図書館で実施し、ルビの付いている資料を実際に探したり、どのような資料にルビがついていることが多いのか確認したりすることで、ルビのニーズのある人やそのメリットの多様さについて、生徒から活発な意見交換がありました。国語以外にも、家庭科や総合など、さまざまな科目との連携を進めています。
特別支援学級でも、マルチメディアデイジー図書を活用し、見え方の調整や読み上げ速度の変更などの設定の体験しながら、自分に合った読書の方法があることを知る機会を設けています。生徒から、読みやすかった機能に順位をつけて発表してもらうと、みんな違う機能を便利と感じていたことが分かり、便利さは人それぞれ違うという気づきの機会にもなりました。
教職員の自主的な研修の場として、学校図書館教育部会にも参加し、その中で読書バリアフリーに関する研修も取り入れています。情報共有の場は、とても大切です。市川市の公立学校職員が情報を共有できるフォルダをインターネット内に設けており、読書バリアフリーに関する情報や、りんごの棚やわいわい文庫の資料など共有しています。市内でも、学校図書館にりんごの棚を設置する取り組みが広がっています。また、公共図書館と学校とを結ぶネットワークシステムを活用した読書活動に加え、特別支援学級での読書活動の話題も取り上げられるなど、読書バリアフリーへの関心が高まっています。